3)プロジェクト概要

●何が作られているのか:オープン・フリー(誰もが無料で利用)かつ十分な日本語表現力を備えた電子書籍交換フォーマット。
●どんな役に立つのか:電子書籍に関わる出版社、制作会社、メーカーにとっては、今までより容易に電子書籍、端末、リーダーを制作できる、読者においては豊富な電子書籍を手軽に楽しめる、これから始めたい一個人や企業においても従来より大幅にハードルが下がり参入しやすくなる、など多方面にメリットを提供。

1-1 背景説明 <なぜ交換フォーマットが求められたか>

 本プロジェクト概要の正しい理解の一助として、現有の電子書籍制作環境を少し説明しておきたいと思います。
今までの電子書籍市場は、端末メーカーや技術ベンダーが独自開発した電子書籍用のフォーマットを利用することが多く、電子書籍を提供する出版社においては、自社書籍をそれぞれの端末/プラットフォームのフォーマットに合わせて作らなければなりませんでした。つまり、紙の書籍は1つでも、電子書籍としてはA社用、B社用というように複数を用意する必要がありました。
このような状況は、出版社を含むコンテンツ提供側にとっては、制作コストの面で豊富なコンテンツ供給の障害になっていました。読者であるサービス利用者においても、端末によって読めるコンテンツ、読めないコンテンツが生じるなど、利便性のある環境とは言えませんでした。
また自社技術を競い合う端末メーカー・技術ベンダーにとっても、新しい端末やビューアを鋭意開発しても、コンテンツが豊富に供給されるかどうかの保証を得るのが難しいという面もあり、これらの状況が、電子出版の普及の妨げの一つとなっていたことは否めません。
一方、海外に目を向けると、海外にも電子書籍のフォーマットはありましたが、精査してみると、日本語の表現力が十分ではなく、我が国の出版物の表現、およびこれまで蓄積されたコンテンツの継承について、懸念が残りました。

1-2 「オープン・フリー」な電子書籍交換フォーマットに向けて
<電子書籍作りのハードルを下げ、誰もがより自由に、負荷少なく出版できるために>

 このような問題を解決するため、「オープン」=メーカー、ベンダーによる制限を極力下げ、かつ「フリー」=誰もが無料で利用でき、十分な日本語表現力を備えた電子書籍交換フォーマットを開発・策定することとなりました。

 もちろん、

  • 既存の貴重な電子書籍資産の活用
  • 将来技術への対応

も包含し、

  • 効率よい業務の進行

を意識して、本プロジェクトは鋭意進捗しております。

 またどんなに素晴らしいものでも、使っていただけなければ意味はありません。本プロジェクトは、上記の電子書籍交換フォーマットの開発・策定のみに留まらず

  • 市場への普及

も目的のひとつとしています。このため協議会メンバーの協力を得て、有効性についての実証も行っております。

 本プロジェクトにて策定する仕様や関連するツールはプロジェクト終了(3月末)後、一般公開(オープン)を無償(フリー)で実施する予定です。
これにより、出版社は電子書籍制作がよりスピーディーに行え多くの作品を提供できる、メーカーは対応端末の開発が容易になり個性ある機器を豊富に提供できる、著者は電子書籍市場の活性化で作品提供の機会が増える、などが期待されます。
その結果、読者においては、今までに制作された20万点以上と言われる電子書籍に加え豊富な新刊(電子書籍)を、多彩な閲覧用端末から自由に選べるようになり、電子書籍という読書環境が誰にとっても身近なものになります。
さらにオープンでフリーであることから、電子書籍出版を希望する一個人に対しても制作費や参入機会のハードルが大きく下がることと予想されます。

1-3 プロジェクトの開発・実証内容 <具体的な内容>

 本プロジェクトでは、以下の開発および実証を行っています。

a)いろいろな端末/プラットフォームで利活用でき、十分な日本語表現力を備えた、オープンかつフリーな、電子書籍交換フォーマットを策定する。
(注記:電子書籍交換フォーマットは、各端末/プラットフォームに依存しない「XMLフォーマット」。各端末/プラットフォームに供給される電子書籍コンテンツは、本XMLフォーマットから変換され配信可能ファイルとして提供されると想定される)

b)策定された電子書籍交換フォーマットに基づいて、実際にコンテンツを作成し、既存の電子書籍フォーマットとの変換可能性の実証。これにより電子書籍交換フォーマットが実用性を持ち、十分な機能を持っていることを実証する。

 このような活動により、出版したいという一般ユーザ、民間ビジネス、官の政策に広く用いることができる、電子書籍交換フォーマットを確立します。

 加えて、

c)電子書籍交換フォーマットが、他国において排除されることを防止し、我が国及び他国における政府調達で利用され得るようにするため、国際標準に反映する活動を行う。

 についても鋭意実施の意向である。

 

 具体的な作業面では、1-2にて明記した、

  • 既存の貴重な電子書籍資産の活用
  • 効率よい業務の進行

をかんがみ、電子書籍交換フォーマットの策定に関しては、現在日本のテキスト系電子書籍フォーマットの大半を占める「XMDF」と「.book(ドットブック)」※1の日本語表現に関する各種機能を包括するXMLフォーマットを目指しています。
いたずらにまったく新しいフォーマットを目指すのではなく、実績あるものの延長に新しい技術・発想を取り入れることで、効率よい業務の進行が期待できます。

 また本フォーマットは、新しい技術・発想という部分において、ePUB※2への変換も視野に入れて推進しています。

「電子書籍交換フォーマット標準化会議における成果物とその概要」
  成果物 概要
電子書籍フォーマットの現状調査報告 電子書籍フォーマットの国内外の状況や、電子書籍の利用環境を調査する.
電子書籍交換フォーマット 従来の電子書籍フォーマット(TTX※3、XMDF記述フォーマット)の機能を包含し、コンテンツの長期利用に適したXMLフォーマット
電子書籍交換フォーマット仕様書 上記フォーマットの仕様書
検証用変換ツール 従来の電子書籍フォーマット(TTX※3、XMDF記述フォーマット)
上記電子書籍交換フォーマットとの間の双方向変換ツール
EPUB2.0 との変換テーブル
検証結果 上記変換ツール※4を用いた実証結果.
コンテンツ提供者/サービス提供者の側での利用可能性の実証結果.
国際標準化提案の準備 IEC TC100において、国際標準化の提案を進められるよう準備する.

※1:XMDFとドットブック:それぞれシャープ株式会社、株式会社ボイジャーにて開発された電子書籍フォーマット。縦書き、ルビ、外字、禁則、左右よせ、縦中横など日本語の伝統的レイアウトを、PCや、各種モバイル端末にてすでに実現している。

※2:ePUB:業界団体IDPFにより策定され、北米中心に業界標準となっている電子書籍フォーマット。日本電子書籍出版社協会は昨年(2010年)12月23日にIDPFに加入。

※3:TTX:ドットブックのソースファイル。

※4:既存の電子書籍フォーマットである、ドットブック、XMDFと電子書籍交換フォーマットとの間の相互変換を行うことで、電子書籍交換フォーマットが十分な機能を備えることを検証するもの。

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